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言われてみればそうなのかもしれない。
私は地上に出た時からずっとこの場所にいたため、あまり人間からの脅威に怯えることはなかったけれど、やはり私たちをエサにしている者たちへの恐怖はあった。
使命を果たすためには、歌を歌わなくてはならない。しかしそれは同時に、外敵に自分の居場所を教えることになる。
そんなことを何年も続けていては、頭がどうにかなってしまいそうだ。
そう考えていると、彼女は微笑みながら私に言ってきた。
「この問にはたくさんの答えがあって、どれが正しいなんてものはないと思うから。さっき私が言ったのは一つの答え。もしあなたの中で答えが見つかったら、その時は私に聞かせてね」
彼女はとても無邪気な笑顔を私にむけた。
それから私たちは時が経つのも忘れるほどに語り合った。
気付けば辺りが暗くなっていた。町の明かりもほとんど消えているところを見ると、どうやら深夜になってしまったらしい。
そこで私は重大なことに気がついた。
私が地上で生きていられるのは今日が最後で、まだ私に課せられた使命を果たしていないことを。
その旨を彼女に伝えると、「仕方ないわね」と言って私を受け入れてくれた。
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