Week

5/7
前へ
/40ページ
次へ
 言われてみればそうなのかもしれない。  私は地上に出た時からずっとこの場所にいたため、あまり人間からの脅威に怯えることはなかったけれど、やはり私たちをエサにしている者たちへの恐怖はあった。  使命を果たすためには、歌を歌わなくてはならない。しかしそれは同時に、外敵に自分の居場所を教えることになる。  そんなことを何年も続けていては、頭がどうにかなってしまいそうだ。  そう考えていると、彼女は微笑みながら私に言ってきた。 「この問にはたくさんの答えがあって、どれが正しいなんてものはないと思うから。さっき私が言ったのは一つの答え。もしあなたの中で答えが見つかったら、その時は私に聞かせてね」  彼女はとても無邪気な笑顔を私にむけた。  それから私たちは時が経つのも忘れるほどに語り合った。  気付けば辺りが暗くなっていた。町の明かりもほとんど消えているところを見ると、どうやら深夜になってしまったらしい。  そこで私は重大なことに気がついた。  私が地上で生きていられるのは今日が最後で、まだ私に課せられた使命を果たしていないことを。  その旨を彼女に伝えると、「仕方ないわね」と言って私を受け入れてくれた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加