第一章

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  そんなに睨まれても困るよ、私が言ったことって普通のことだよね? 顔がいくら良くてもこんなに素っ気ない人、絶対彼女と長続きしないと思う。 なんか、彼女にも血も涙も無さそうだもん。 勝手にその人の性格をそう決めた私は、なおもこっちを見てくるその人に、再び視線を合わせた。 「それは奢りだ。飲んだら家に帰ってさっさと忘れろ。」 「え?」 驚いてその人を見上げると、もう不機嫌オーラはどこにも無かった。 「あ、ありがとうございます…小出さん。」 今更ながらにネームプレートをちら見して、お礼を言う私の心は暖かい気持ちで満たされていて、自然と笑顔になっていた。 「あぁ。」 そんな私を見て、優しい目で頬をほんの少し赤くした小出さんは、絶対感謝されなれていないと思った。  
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