第一章

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  そんな小出さんを見て、私は心の中でさっき思ったことを訂正した。 小出さん、さっきの血も涙も無いって言葉訂正します…。見ず知らずの私に奢ってくれるなんて、貴方は思ったよりも良い人です。 ココア一つでそう思い直す私って、かなり現金なやつなのかもしれない。 うん…確実に現金だな。 なんて自分の新たな発見にまた気分を上昇させていた。 「なぁ、後三十分くらいここに居れねぇか?」 「え?」 「いや、やっぱ待ってろ。」 「えっ、ちょっと待って…。」 驚きながらも制止する私の声なんて聞こえてないかのように、無視して去って行く小出さんの後ろ姿を、私はただ呆然と眺めているだけだった。  
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