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そんなことを考えていた時、娘の瞼がピクリと動いた。
僕はじっと彼女を見つめる。
「――ん…ッ、」
ゆっくりと瞼が開けられる…。
そこから現れたのは、僕と同じオッドアイだった。
右は満月のように鮮やかな黄。
左は樹海を思わせる濁った深緑。
僕は彼女が口を開くまでの短い間、しばしその瞳に釘付けになっていた。
「あ…あの、ここは……」
彼女は恐怖と困惑の入り混じった顔で僕を見上げ、尋ねた。
鈴の音のような、という比喩表現がここまでしっくりくる声はないだろう。
赤く小さな唇からはそれこそ鈴の音のように言葉が流れる。
僕はそんな彼女を安心させるよう柔らかく微笑んで、
「安心してください。ここは僕の家です。」
優しく彼女の手を取った。それと同時にビクリと身体を強張らせた彼女は震える声で再び尋ねた。
「ぁ、貴方は…誰?どうして……私を…」
その質問にクスリと小さく笑い、
「僕は六道骸です。
どうして……おかしなことを聞きますね。貴女が倒れていたからですよ。」
“ただ、それだけです”と付け足して再び微笑む。
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