◆第1話◆

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否、そんな簡単な理由ではない。 もっとなにか…本能に逆らえない程の“なにか”が――彼女にあった。 その“なにか”は自覚できないほど隠密に…しかし確実に僕を狂わせたのだ。 微笑む僕に少し安心したのか彼女の身体から力が抜ける。 表情からも、恐怖の念は窺えない。 「貴女の名前は?」 「あ、私は…鈴です。破消鈴(ハショウ リン)。えっと、破けて消えるに鈴と書きます。」 リン…… 鈴…… 「良い…名前です。」 あぁ…僕の考えは間違っていなかった。 彼女は【鈴】なのだ。 僕の口元には再び笑みが浮かんだ。 それを見た鈴も少し照れたようにはにかむ。
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