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千種が僕のほうを見て首を傾げる。
そして彼女を見れば、表情の乏しい千種にしては珍しく明らかに驚いていた。
「見ての通りです。」
やせ細った身体をひょいと抱き上げ部屋へ向かう。
それに犬と千種もつづく。
身長のわりに軽すぎる彼女は僕の腕の中でぐったりとしている。
一体何があったのか……
柄にもにもなくそんなことを考えている自分が可笑しくて、自嘲気味に笑った。彼女をベッドに寝かせると、
「骸さん、コイツどーするんれすか?邪魔なだけびょん。」
と犬が尋ねてきた。
邪魔……
その単語を耳にして、何故だか僕は無意識のうちに眉を寄せた。
犬が彼女に対してそんなことを言うのに堪らなく腹が立ったのだ。
「……暫く、ここで休ませます。」
僕はベッドの脇に腰掛け言った。
千種は僕の命令に逆らうつもりは微塵もないらしく、表情を変えず無言でいる。
犬はというと、その判断が気に食わないのか唇を尖らせた。
しかし僕が“これは命令です”と付け加えれば渋々といった感じで頷いた。
そして僕は、千種には食事を用意するように、犬には救急箱を持ってくるように頼んだ。
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