11人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
キーンコーンカーンコーン
………
始業のベルが鳴った
俺以外に、少女が一人まだ屋上にいる。
今日の午後は一週間のうちでもっともたいくつな、あいつの授業。
ホントは座ってお行儀よくしてればいいだけの授業だし、出席したって構わないんだけどな。
なんとなく、
どーでも、いぃ。
「珍しいね、a li ce」
さっきまで黙っていた、先客がこちらへ近付きながら口を開く。誰だったか。
赤く長い髪を高く一つに結っている。意思の強そうな橙の瞳。
身長がわりと高い為か、制服のスカートが余計に短くみえる。典型的な不良女だな。
「煩い(ウルサイ)、オレはア リ スじゃない。a lic te」
ふーん、といった様子で、彼女は彼を真っ直ぐに見つめ、いたずらっぽく微笑んだ。
「エ リ テ。だって、君がそう書いていたんじゃないの。ネィムプレィトにもテストの答案にも、ね」
語尾は笑いながら答えているので、全く聞きづらい。
最も、真剣に耳を傾けてやろうなんて、欠片も思っていなかったが。
.
最初のコメントを投稿しよう!