同じ迷路に這わされているのは不愉快

3/5
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
リンッ…… 兄が、不意に囁いた。 ―早く、大きくお為り。そして、また始めよう―もぅ随分と待ったんだ。 ―君らのスパイラルは、本来永遠とは限らないからね… 微笑んでいるのは確かにわかるのに。 何故だろう。 その瞳の色も 顔立ちも 髪の色も 聲(コエ)も 思い出せないよ。 その優しい手の 温もりも。 …リンッ そのスズ、いつくれるの?ねぇ、――兄さん… リン… ……ン ―――― ――― ―― リリ、 …リ…ジリリリ ― 広い寝室には、黒を基調としたシンプルで必要最低限の家具が並んでいる。 生活感をまるで感じない、整った清浄な空間。 窓際から、とっくに昇った日の光が燦々(サンサン)と降り注ぐ。 その光に照らされながら、今やっとその明るさを知ったかのように、眩しそうに僅かに顏をしかめる少年がいた。 長めの黒髪が、陽に透かされていながらも、より漆黒に輝く。 痩身で、健康的ではあるがとがった顎、整った顔立ちは少し神経質そうな印象を受ける。 .
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!