11人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
リンッ……
兄が、不意に囁いた。
―早く、大きくお為り。そして、また始めよう―もぅ随分と待ったんだ。
―君らのスパイラルは、本来永遠とは限らないからね…
微笑んでいるのは確かにわかるのに。
何故だろう。
その瞳の色も
顔立ちも
髪の色も
聲(コエ)も
思い出せないよ。
その優しい手の
温もりも。
…リンッ
そのスズ、いつくれるの?ねぇ、――兄さん…
リン…
……ン
――――
―――
――
リリ、 …リ…ジリリリ
―
広い寝室には、黒を基調としたシンプルで必要最低限の家具が並んでいる。
生活感をまるで感じない、整った清浄な空間。
窓際から、とっくに昇った日の光が燦々(サンサン)と降り注ぐ。
その光に照らされながら、今やっとその明るさを知ったかのように、眩しそうに僅かに顏をしかめる少年がいた。
長めの黒髪が、陽に透かされていながらも、より漆黒に輝く。
痩身で、健康的ではあるがとがった顎、整った顔立ちは少し神経質そうな印象を受ける。
.
最初のコメントを投稿しよう!