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最後に華恵に会ってから一週間が過ぎた頃だった。
彼女から一通のメールが届く。
【奈々に見せたい物があるんだ。今日帰りにでもうち寄れる?】
特に予定のない私はすぐに返事をした。
そして残りの仕事に取りかかった。
大手電気メーカーの重役秘書。
それが私の仕事。
表向きは重役秘書なんて最高な肩書きかもしれないが実際やっている事と言えば雑用係りみたいな物。
最初こそやる気満々でその仕事に不満なんて無かったけれど、実際はセクハラやパワハラにあいながらそれらを我慢する事が全ての様な現状に嫌気がさしていた。
頑張れる要素が今の私には無い。
片手にコーヒー豆を持ちながらため息をつく。
メーカーに煩い重役達の為に買い揃えられたコーヒー豆は音を立てながら機械に吸い込まれていった。
そして午後五時。
一通りの書類の整理が終わると、他の二人の同僚に挨拶を済ませ部屋を出た。
扉を閉めてすぐに翌日に控えている大事な会議の資料をバックの中に確認すると、真っ直ぐに歩き出した。
華恵の家に向かう為に。
見せたい物が一体何なのか、少しだけワクワクしながら。
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