やっと動き出す。

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その夜、私は華恵の家から持ち帰った紙を片手に電話を掛けた。 『はい、恋人専門人材派遣会社レプリカです』 「あ…あの…やっぱり…」 電話をしてみたけれど、やっぱり踏み出す勇気はない。 断ろうとしたが、話しは私の考えを無視する様に進められた。 『初めての方ですね?心配しなくて大丈夫ですよ。登録ですか?派遣依頼ですか?』 感じの良さそうなその声に、私は断る事が出来なくなった。 「じゃ、じゃぁ…派遣依頼で…」 『畏まりました。では細かい手続きは追って郵送致します。理想の人物像だけお伺いしてよろしいですか?手配致しますので』 「あ…じゃぁ…身長は178くらいで…体重が50キロくらい、それから髪は少しだけ茶髪で…性格は割と穏やか。コーヒーはお砂糖入れないと飲めなくて、犬好きで、ちょっとだけロマンチスト…ってこんな人居ないですよね…」 無理な注文だと自分で言っていても良く解っていた。 それでもそれらを外せない。 一つ一つ私の大切な思い出で、付き合う人に嫌でも重ねてきた事だから。 『いえ、ご用意致します。他には何か御座いますか?』 こんな我が儘でも受け入れてくれたその電話の相手に、私は最後に言った。 「じゃぁ、もう一つだけ…。私が心から愛せる人を…」 『愛してくれる、じゃなくてですか?』 「…はい」
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