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淳平…?
街中で隣を通り過ぎた背の高い男性。
風に靡く香りは彼の使っていた香水の香り。
振り向きながら後ろ姿を見つめる。
そして、隣に立つ女性と楽しそうに会話をするその横顔は全く別人だった。
私は毎日何をしているんだろう?
忘れたいのに、気がつけば彼の面影を追いかけている。
もう戻らない過去をいつまでも引きずって。
あれから、あなたに突然の別れを告げられてから、もう二年が立ちます。
私は何人かの男性とお付き合いをしましたが、その誰もがどこかあなたの面影を感じさせる方ばかりでした。
未練たらしい女だと思われるでしょう。
だけど、私の心は上手く言うことを聞いてくれないのです。
二年前、冬。
「奈々、ごめん…」
何も言えずにただ、向かいに座る人を見つめた。
本当に申し訳なさそうにする彼に私は何も言う事が出来なくなった。
「結婚…する事になったんだ…」
頭が真っ白になった。
深く頭を下げた彼。
そこから推測するに相手は私ではない。
「私…じゃないんですよね?」
「…ごめん」
それから彼は私と一度も目を合わせてはくれなかった。
私は二股をかけられていた事にこの時まで気づく事ができなかった。
気づいた時には遅かった。
本当に愛されていると思っていたのに、私の勘違いだったのかもしれない。
そう思うと、怖くて誰にも心を開けなくなった。
それなのに、やっぱり彼の事は大好きで、忘れられなくて…
私は良い思い出ばかりを忘れられずに大切にしている。
ずっと…ずっと彼の面影ばかりを追っている。
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