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「愛してる…」
「私も…」
画面の中の二人はそう言うと目を瞑り、深いキスをした。
私はこういった純愛物の話しが大好きで、淳平とのデートでは幾度となく映画館に足を運んだ。
家で過ごす時間にはDVDで何度も同じ場面を繰り返して再生する私を見て、淳平は良く笑った。
「よく飽きないよな」
「だって、見てると暖かくなりません?」
隣に寄り添って同じ画面を見つめていても私と彼の感じ方は大分違ったけれど。
「愛してるなんてこんな簡単に言ったら嘘っぽいだろ」
「じゃあ淳平は愛してるって言ってくれないんですか?」
私が彼を見つめてそう尋ねると、彼はいつでもこう言った。
「言葉にしないと解らない?」
私は確かに愛されていると感じたけれど、それでも言って欲しかった。
言葉と言う確かな方法で。
欲張りな自分が恥ずかしくなって、私はそんな事口に出来なかったけれど。
別れを告げられる数日前に彼が言った言葉は、まだまだ子供だった私には難しくて理解に苦しんだ。
ロマンチックだなぁ…
そんな風にしか捉えなかった。
だけど、感性豊かでそんなどこか変わった彼が大好きだった。
『真実の愛があるなら見てみたい。簡単に口に出せる様な作り物みたいな愛じゃなくて…
何を犠牲にしてもいいくらい心から愛してるって思いたい。
それで相手がそう思ってくれるなら……
俺はそんな深い絆みたいな物を感じてみたいな…』
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