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名のある政治家の父は、跡取りとして申し分のない教養を身につけさせていた長男の突然の病に慌てふためき、名医たちが次々と診察に呼ばれた。
そうしてでた診断に、父は僕をこの病院に放り込んだ。
周りは、息子の身障を気遣って大事な跡取りを設備のいい田舎の病院に送ってあげるなんて、父親の鏡ねとか好き勝手に美談にしているが、僕は知っている。
父の体裁のために僕はここにいるんだ。
でも、それでもいい。
いま、僕はしあわせだ。
ぱくぱくと動く唇の形で彼女は僕を理解してくれる。笑ってくれる。
いままで誰にも言えなかったことを、静かに聞いてくれる。
そうだね、と下心なく共感してくれる。
それは、たまらなく幸せなこと。
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