当たり前だった日常

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誰かが囁いた。 壊れないものは無いのだと。 不意に誰かが呟いた。 変わらないことを望むのは罪なのかと。 分からないと──誰かは泣いた。 手からすり抜けていく。 何もその手には残らない。 誰かは終わりを望んだ。 けれど、許さないと誰かは怒る。 その時に触れた手は確かに自分を繋ぎ止めてくれた。 ◆ それは、あまりにも突然だった。 何の前触れもなく当たり前だった日常が壊されたのだ。 毎日、世の中に溢れ返るニュース。 それに自分が巻き込まれるかもしれないと、誰も想像はしていないだろう。 誰もが明日も幸せに生きていると思っている。 家族や友達と笑い合っているのだと信じて疑わない。 「ねえ、あの人でしょう? 家族をさ……」 実波(みなみ)が学校の廊下を歩いていれば、潜めた声と不快な言葉が聞こえてくる。 眉を寄せながらも気づかぬ振りをして教室へ足を進めた。 悲しくても泣いてはいけない。 怒ることも、悲しむことも──。 今の状況に置かれている自分の反応は、どんな形であれ周りに話のネタを与えることにしかならないと分かっている。 それが何よりも嫌だった。
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