踏み出した一歩

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「そんなことより、逢坂にちょっと話したいことがあるんだ」 「はあ?」 「男だけの話がしたくてさ。もちろん、逃げたりしないよな?」 予想外のことに智夜は僅かに瞠目した。 意味が分からない智夜は思わず睨んでしまったが、太一はまったく笑顔を崩さない。 その表情からは何も読み取れず、どこか不気味だ。 実波は気づいていないのだろうか。 ただ驚いている姿に智夜は溜め息をつく。 「はあ……分かった。話くらい聞いてやる」 「決まりだな。ごめん、実波。今日は先に帰るか、教室で待っててくれる?」 「あ、うん。それは良いけど……」 以前よりは一人でいても不快な思いをすることが少なくなってきたのか、実波は素直に承諾したが何とも言えない顔で太一と智夜を見ている。 喧嘩でもするのではないかと不安に思っているのか、はたまた話の内容が気になるのか。 どうやって説明しようかと太一が考えた時だった。 「あの、実波ちゃん!」 今まで黙って帰る支度をしていた双葉が、ガタリと椅子を鳴らして立ち上がり実波に声を掛けてきた。 突然のことに驚き、三人はそちらへ顔を向ける。 やはり何処か泣きそうな顔をしていると、太一は双葉の様子を窺った。
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