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ーーーーああーー。 またこの夢だ……。 見慣れた楽園。だけど、ここがそんなんじゃないって事はなんとなくわかる。 オレはここで客観的に見ているようで見ていない。まるで、夢の出演者の一部になった感じがするんだ。 重なり合うようにオレは彼女と一緒に、自分の手を引く男の背中を見る。 掴まれた手が痛いけど、それでも一生懸命ついていくんだ。 息が上手くできなくて 足が今にももつれそうなとき 彼女とオレは一緒にその手から引き離される。 大勢の人々から与えられる痛みにだんだん意識が遠退いていく。 せめて……もう一度……あの男をみたいと目をあけると…… 暗転した世界に誰かがいるんだ。 オレはいつもそこで怯える。一緒に重なり合っていたはずの彼女はいなくて オレだけがいて。 怖くて仕方なくて。 暗闇の中にいる誰かがこっちを見ようとしたそのとき 「………」 目が覚めるんだ。 ボーーッとした視界を何度か瞬きして竜矢は見つめた。 いい加減にしたいなと思うくらい、この夢は見る。 わけわからん……。竜矢はむっくりと起き上がる。 一瞬、白髪ですか?と見える青がかった髪をピンピンと引っ張るのが、ついやってしまう起きたときの竜矢の癖だ。 生まれつきの色素異常なんだよー。ちくしょう。 お陰で少しばかり体の弱いのも、竜矢にとってはコンプレックスの一つだが、髪に関してはなんか最近、羨ましがられるのでまあいいかと思いだした。 今日は入学式。 さっきから母親の声が聞こえる。 竜矢は髪をさっさと直して、制服に手を伸ばした。
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