すれ違う。

1/4
119人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ

すれ違う。

『パスパスパスッ』軽快な足音が響き渡る。一際背が高く、センスのある零時に仲間はボールを集めようとする。 敵の間をかいくぐって、ボールが渡され、それを持って押し寄せる相手をすり抜け、ゴールへとボールを投げる。 見事に決まって周りから歓声があがるが、零時は比較的冷めた目でそれを見る。 彼が楽しいのはボールが自分に渡され、敵の間をかいくぐるその時だけだ。 どんなゲームに関してもそうだった。 結果には興味がない 敵という存在を欺き、くぐり抜け、なぎ倒し、 その存在が崩れ落ち、自らが映える。 そのときが何よりも自分を興奮させるのだ。 倒すだけ倒したら、後は、自分が死のうが、その後がハッピーエンディングだろうが、自分には関係ないと思ってしまう。 ……つまり、苦労人か…? かっこわりぃ。 あ~あと声を上げて汗を吹き上げると、視界の片隅に奴が映った。 …天神 竜矢……。 クラスが同じだから名前がわかった。物静かというか、人嫌いというか。 あまり、みんなとワイワイ騒ぐタイプじゃないみたいな事はわかった。だけど、あの珍しい容姿で有名ではある。 色素異常か……。色も白いしなあ。だけど、体が弱いとかで今日の体育も見学ってわけだ。 本人はかなり不機嫌そうだが。 色素異常……。そういう病気ってあるんだな。零時は思う。 なら、自分もそうなのか。 そっと窓ガラスに映る自分を見る。…普通にみれば、全く他と変わりない自分の目は、鏡やガラスを通すと…… …血の色っ……! ふいに、ヒステリックな声が蘇ってきて零時はびくりとした。 気味が悪いっ……! 零時は首を振った。 終わったことだ。 零時は逃げるように視線を逸らした。 ふいに向かい側に立つ、竜也と目が合った気がしてマジマジと見てみる。 ……気のせいか。 相手はボーッと向こうのチームを見ている。 零時はさっさと自分を呼ぶ仲間のところへと向かった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!