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すれ違う。
『パスパスパスッ』軽快な足音が響き渡る。一際背が高く、センスのある零時に仲間はボールを集めようとする。
敵の間をかいくぐって、ボールが渡され、それを持って押し寄せる相手をすり抜け、ゴールへとボールを投げる。
見事に決まって周りから歓声があがるが、零時は比較的冷めた目でそれを見る。
彼が楽しいのはボールが自分に渡され、敵の間をかいくぐるその時だけだ。
どんなゲームに関してもそうだった。
結果には興味がない
敵という存在を欺き、くぐり抜け、なぎ倒し、
その存在が崩れ落ち、自らが映える。
そのときが何よりも自分を興奮させるのだ。
倒すだけ倒したら、後は、自分が死のうが、その後がハッピーエンディングだろうが、自分には関係ないと思ってしまう。
……つまり、苦労人か…?
かっこわりぃ。
あ~あと声を上げて汗を吹き上げると、視界の片隅に奴が映った。
…天神 竜矢……。
クラスが同じだから名前がわかった。物静かというか、人嫌いというか。
あまり、みんなとワイワイ騒ぐタイプじゃないみたいな事はわかった。だけど、あの珍しい容姿で有名ではある。
色素異常か……。色も白いしなあ。だけど、体が弱いとかで今日の体育も見学ってわけだ。
本人はかなり不機嫌そうだが。
色素異常……。そういう病気ってあるんだな。零時は思う。
なら、自分もそうなのか。
そっと窓ガラスに映る自分を見る。…普通にみれば、全く他と変わりない自分の目は、鏡やガラスを通すと……
…血の色っ……!
ふいに、ヒステリックな声が蘇ってきて零時はびくりとした。
気味が悪いっ……!
零時は首を振った。
終わったことだ。
零時は逃げるように視線を逸らした。
ふいに向かい側に立つ、竜也と目が合った気がしてマジマジと見てみる。
……気のせいか。
相手はボーッと向こうのチームを見ている。
零時はさっさと自分を呼ぶ仲間のところへと向かった。
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