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授業終了のチャイム
オレは、みんなが出口に向かう中、比較的、出口に近い壁際に寄りかかった。
あの人混みの中にもまれるなんて絶対嫌だ。
吐き気がしてくる。
別に、潔癖症だとか人嫌いだとかそんなつもりはないけど。本当は、もっとあの中に入って普通にしときたいけど。
条件反射みたいに気分が悪くなる。
小さな溜め息をついて竜矢は顔をあげた
途端に、あの男と目が合う。
ゲ。…また睨まれてる?
負けずに睨み返してみると、なんとなく相手の目が僅かに見開かれた気がした。
ゆらゆらと黒い瞳の中で光が泳ぐ。
その様を思わず、見入ってしまった。
気がつけば、相手はいきなり走り出す。
相手が視界から消えたことで竜矢はハッとして我にかえった
………見入ってしまった………
有り得ないことに自分でも唖然としてしまう。
だけど………
初めてなんだけど
あの目が懐かしく思えて、何故か悪い気はしない。
ま、いっか。
人混みがばらけたのをみて、竜矢は壁から離れた。
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