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出逢う
ーおうおうおうおう。
予想はしてたが、見事なまでに避けてくれちゃってんじゃねえかよ!
零時が歩く周りは奇妙な空間ができている。
痛いほど感じる視線だが、かなり慣れてしまっているし、どちらかというと好意的なものだからまあ構いやしない。
零時は上を見上げた。桜並木は淡いピンクの花びらを惜しげもなくひらひらと風に舞散らせている。
彼の背では、下のほうの花弁が彼の額を微かに掠め、くすぐったい感触を残していく。
零時はなぜか、それが気に入ってしばらく上を見上げてはその感触を楽しんだ。
やがて、桜並木が途切れ零時が、やれやれと首を振ったそのとき、何かに惹かれるように零時は向こうの桜並木から出てきた少年を見た。
青がかった銀色の髪は、桜のせいでどことなく淡い桃色をのせて風に靡いている。
ーうわ。珍し~…あんな髪とかいるんだ
好奇な目で零時は見つめる。
不良ってやつかあ?でもなんかなよっちぃしな…。趣味?…いやあ、あんなん早速目つけられて痛いだけだろー
悶々と考えていた零時の視線に気付いたのか、それまで遠くを見ていたその少年が零時を見た。
真っ直ぐな目が零時を見つめる。
ドキ…ン……
ーーえ゛?
ちょ、ちょ、ちょっと待て。
今の効果音なに?
ドキってなに?
何?俺ったらいきなり血迷ったわけか?
それとも5月病?
いやいやいやいや!季節違う違う。
何?何?なんなわけっ?!
そのうち、少年は零時から視線を外して歩き出した。それがわかって、なんとも形容しがたい気持ちに襲われる。
マジで俺どうしたんだ?!男にときめくだなんて冗談じゃねえぞっ!!!
バクバクする胸を押さえて、零時は言い聞かせた。
それでも、さっきのあの目が忘れられない。光に照らされた唇が忘れられない。
俺、本気でどうしたんだよっっ………!
零時は混乱する頭をぐしゃぐしゃっとかきむしった。
それでも、あの桜と対比したような唇が忘れられなかった
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