第2話

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「あの、マスター・・・お話の途中でごめんなさい」 気がつけば彼女が申し訳なさそうに私の近くまで来ていた。 ・・・ヤバい、やっぱりかわいい。なんか彼女から甘い香りがしてくる気がする・・・・ってわーわーわー!!何考えてるんだ私! 「ん、どうしたんだい?」 「あの、このカップは何処に持っていけばいいんでしょう?」 と、いいつつ小首をかしげる彼女。 素かッ!?素なのかッ!?その仕草は素なんですかッ!?むしろ狙ってやってくれてるほうが清々しいんだけど!! 「あぁ、それはそこにおいといて、後からするから。それより今日はもうあがってくれていいよ」 ん?彼女がバイト始めた時間わかんないからなんともいけないけど、なんでこんな中途半端な時間に帰すんだろう・・・。 「あ、はい。わかりました。それじゃあお先に失礼します」 「はい、お疲れ様。明日もよろしくね」 「はい」 ニコッとほほ笑んで店の奥に引っ込んでいった。 そしてマスターはおもむろに彼女が置いて行ったカップと私の飲んでいるコーヒーをさげる。 「ちょっとマスター、私まだ飲んでるって」 「なに言ってるんだい。沙月ちゃんを誘ってどこか遊びにでもいってきなさい」 ・・・そういうことですか。 「ほら、早く行った行った。コーヒー代はツケといてあげるから」 グッ!と親指を立てて見せるマスター。 ツケなんだ、ていうかツケなんだ。私の残ったコーヒー勝手に下げといてツケなんだ。おごりじゃないんだ。 しょうがないので席から立って出口に向かう。 「またおいで」 満面の笑みで私を見送るマスター。 覚えてなさいよ、絶対コーヒー代踏み倒してやるんだから。 大きな不平不満アンド不安と、豆粒ほどの期待と、ささやかな楽しみを胸に、私はAstraを後にした。
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