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「あれ、もうこんな時間」
沙月さんは今気づいたのか、空と時計を見ながらそう呟く。その表情には影がかかっていてよく見えない。
「もう黄昏時か。お互いの顔も見えなくなっちゃいますね」
「・・・そうですか?このへんは夜でも明るいから大丈夫だと思いますけど」
「あ、いえ、黄昏の語源の話でですね。お互いの表情が見えないから、彼は誰───つまり誰そ彼なんですよ」
「へぇ・・・沙月さんってものしりなんですね」
「これは、父の受け売りなんですけどね」
・・・・・・そう言って笑う沙月さんには若干の違和感を覚える。彼女はとても懐かしそうに笑ってそう言うのだ。
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