第6話

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「沙月さんって・・・・・」  そう口にしたとき、沙月さんの持っていたバッグから携帯の着信音が鳴った。同年代には珍しい音楽ではない単調な電子音。 「ちょっとごめんなさい」  沙月さんは謝りながら携帯電話を取り出す。取り出して、沙月さんは動きを止めた。  鳴り続ける電子音。その音はどこまでも人を不安にする。  気になって沙月さんを見たが、彼女の表情は影でよく見えない。 「沙月さ────」  そう問おうとした刹那、彼女は私に抱きついた。しがみつくように、すがりつくように。まるで、怯えた子供のようだ。 「お願い、私を貴女の部屋に泊めて・・・・」  そう、震えた声で言った彼女の手には電子音のなり続ける携帯電話が握られている。  そのディスプレイには"母"と表示されていた。
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