傷跡を自覚した

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(……ね、珠呂、起きて) 『ん、今、起きるよ…』 毎日千鳥の声で目が覚める もちろん千鳥なんて居るはずもなく、この部屋に居るのは俺と…………千鳥の慰霊だけだ あれから一年とちょっと。 もう少しで俺と千鳥の誕生日、そして千鳥が死んだ日 嬉しいけど悲しい日 もちろん、未だに傷は癒えない いや、一生癒されないってことは分かってる だけど前に進むって決めたんだ 千鳥はちゃんと生きてる いつも傍に居てくれている 君以外を好きになる日は来ないだろうなぁ…なんて思ったり まあ、そんなことはどうでもよくないけどいいや さあ、学校に行こう 『じゃあ、行ってくるよ。千鳥…』 そして俺はドアを開けて行ってきますとだけ告げて家を出た 学校へつけば皆が皆心配した (気の毒、だったな)(今度線香あげさせてっ)などとわらわらと俺の周りに集まる 前までの俺だったならば“五月蝿い”って払いのけそうだな 『皆、ありがとうな、千鳥が喜ぶよ…』 俺がそう言えば泣いていた子達が更にわっと泣いた というか周りに集まっていた皆が泣いた ガラッと入ってきた先生は(どうしたぁ?―――っ!!!!)と入るなり、俺を見て驚いていた そして先生までもが泣いた 『全く、大の大人が泣いていては先生に示しがつきませんよ』 先生はうるさいと言って俺の髪をぐしゃぐしゃとかきむしった 鼻を啜りながら先生はみんなに席に着くように指示をした 「はいっ、ズビッ、みんな、転入生の麻生涙花くんだ!さあ、麻生、入れっ」 ガラッ「はい」 「初めまして、麻生涙花と言いますっ、よろしくお願いします」 俺は絶句した もちろんクラスのみんなも思わずながしていた涙を止めてしまうくらいだから それくらい酷似していたのだ 容姿、声、仕草、何もかもがあの…俺の双子にして最愛の千鳥に… 初めは何かの間違いかと思った 千鳥が戻ってきてくれたのかとか有り得ないことをおもったが違う この人は千鳥じゃない そう思いたいのに 俺の目は君を捕らえて離さない 「よ、し…麻生の席はあそこだ」 そう言って俺の席の隣を指定し、麻生は俺の隣に座った 「よろしくね、えと…」 『しゅ、ろ』 「珠呂っ、仲良くしてね」 『……、』 止めて、これ以上千鳥の声で呼ばないで…そう思っているのにもっと呼んでほしいと思う自分が居る 気づいたら泣いていた… †
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