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石
父は熱帯魚が好きだった。
ある時父に連れられて近所の河原に水槽に敷くための石を取りに行くことになった。
私がまだ小学校低学年の時の話である。
河原に着くと父は車から道具を出し、適当な大きさの石を作ると釜戸の様なものを作り、火を起こし始めた。
私は父の言うままに薪になるようなものを集めては火に投げ入れた。
ある程度火が付くと、スコップで掬った砂利をふるいにかけ、それを次に火で炙り、炙り終えると新聞紙の上に広げた。
実に手際良く作業を進める父の姿を始めは楽しく眺めていたが次第に飽きてきて川の中に入って魚を探すことにした。
「あんまり深い所まで入るなよ。」
と叫ぶ父の声を背に私は夢中で魚を探した。
足の異変に気付いたのは、再び父の元に戻った頃だった。
左足の裏がずきずきと痛んだ。
不思議に思い足の裏を眺めても怪我や異常はなかった。
作業を続ける父に言い出せず、足の痛みをじっと堪えた。
耐えかねて父に伝えたのは日沈前の頃だった。
額には油汗が滲み出していた。
慌てた父は足の裏を切ったと思い、私の足をじっと眺めた。
「おかしいな?傷とかはないな。」
そう呟くと急いで道具を車に積み込み、私をおぶって車に乗せた。。私の左足はその時既にもう動かなくなっていた。
父に担がれ家に入るとその様子を見た母はヒステリー気味に慌てふためいた。
母は心配そうに僕の左足を眺め、そっと触れては痛いかどうか聞いた。
父は父で風呂桶に湯を入れてきて温めてみることを試させた。
結局、傷などは見つからず、打ち身も見られないことから、疲労じゃないかという見解になり、僕の左足には湿布が貼られ、包帯が巻かれることとなった。
だが足の痛みは一向に引くこともないまま夜を迎え、病院の営業時間を超えてしまっていた。
全く寝ることが出来なかった私を母は連れ、病院に向かったのはその翌朝のことである。
母は医師に「昨日から急に左足が痛み出し、原因が分からないで湿布を貼りましたが痛みが引きません。」と告げた。
異変に気付いたのは包帯をほどき湿布を外した時だった。
足の裏が斑尾模様に薄っすら黒くなっていた。
それを見た母も驚き昨日は無かったと告げた。
医師は軽く触診をした後、レントゲンを撮ると告げた。
何枚かの撮影が終わり、現像を待つ間、私と母は足の裏をまじまじと眺めた。
さっきよりも色濃くなっているように思えた。
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