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少し満足して部屋に戻る頃には、空はくたびれた紺色になっていた。
「紺」って響きが好き。
また好きなものを発見したあたしは、ワクワクしながら化粧ポーチを手に取った。
シンと夕飯も悪くない。
今日は1日中部屋に居たから、ちゃんと化粧をして外に出るのも悪くない。
あたしは食べたいものを考えながら部屋の隅に座って、化粧品を膝に広げた。
ピーンポーン
あたしが鏡を手にとったのと同時にチャイムが鳴る。
ビックリして立ち上がったあたしの膝から化粧品が音をたてて落ちていった。
落ちた化粧品をうんざりした気持ちでまたいで玄関に行くと、あたしの知り合いの中で唯一 合鍵を持つシンが既に靴を脱いでいるところだった。
「早いね」
あたしが横に座るとシンは あたしの方をチラリと見て言う。
「どうせボーっとして準備してないだろうから、急かしに来たんだ。」
言い終わらないうちにシンは、あたしを玄関に残して部屋に入っていく。
シンの履いてきた靴を意味もなく見つめていた あたしが部屋に入っていくと、シンが化粧品をポーチに入れ終わったところだった。
あたしがスローなマイペース人間なら、シンはハイスピードなマイペース人間。
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