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「その新型兵器ね、私なの」
……いまなんと?
「あはは~良く有るお約束展開だね。こういう漫画とか読んだことあるでしょ?」
うん。と思いながらもなんか良くわかんなくてパニックになりそうな裕一。
「……」
少女は少し俯くと、少し考えるような表情をして顔を上げた。
その表情はやや引き攣っており、なにかこれからの自分の行動に抵抗や嫌悪を感じているようだった。
「私ね、この手でたくさん、たくさん人を殺したの」
裕一にと言うよりも自分を戒める様に、震える自分の両手を見つめながら言う。
「兵士、将軍、一般人の男、女、老人、少年、少女、揚げ句の果てには赤ん坊まで殺せるだけ殺して」
殺戮の限りを尽くして。と呟いて震える両手は尚も激しさを増していく。
「殴って、潰して、刺して、引き裂いて、貫いて、えぐって、切り裂いて、飛び散らせて」
震える唇が紡ぐのは懺悔。
裕一に聞かせるというよりは、自分の行いを責めているといった様子。
「あの時は楽しんで人を殺してた。
泣き叫ぶ赤ん坊が五月蝿かったから目玉を刔って首を折って殺した。笑いながら」
両手の震えは、全身に広がっており、がたがたと小さな少女の体が震えている。
「もう……いいよ」
「子供だけは助けてくれと懇願する母親の目の前で子供を八つ裂きにして、泣き叫ぶ母親の口に子供の肉片を詰め込んで窒息させて殺したりもした。嘲いながら」
「もういい!!」
少女は顔色を失い、両腕で自分の体を抱き、がたがたと震えている。
裕一は少女をゆっくりと優しく抱きしめた。
「……こんなに残酷で薄汚れた生物兵器なんだよ…? 怖くないの!? 気持ち悪くないの!?」
少女は悲哀に満ちた表情で半狂乱になって叫ぶ。
「お前は俺の事助けてくれただろ」
裕一は幼い子供に言って聞かせる様に、優しく、温かく、語りかける。
初めて、初めてかけられた温かくて、優しい言葉。
それは少女の箍を外すには十分で数瞬もあれば鳴咽を漏らしていた。
「うっ……ふ……ぁ……ぅ…………」
「泣け泣けすっきりするぞ」
この言葉で完全に箍が外れたのか。
「ぅ……わあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!」
外見通り、歳相応の表情で泣き崩れた。
裕一は困った様な笑みを浮かべながら、よしよし、と少女の頭を撫でる。
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