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10分程時間が過ぎて、少女は泣き疲れて眠ってしまった。
「ってか自己紹介終わってねぇし……」
裕一は苦笑すると少女を抱き抱え、寝室のベットに寝かした。
「お休み、小さくて、か弱い女の子」
裕一は小さく呟くと何言ってんだ俺と再び苦笑し踵を返してリビングに戻る。
そして、
「いらっしゃい、君はNo.000の関係者かな?」
いつの間にかこのマンションに侵入していた人陰に向かって柔らかな口調で問う。
そこに居たのは紫色の髪に黒い瞳。小柄な体躯はベットで寝ている青髪の少女そっくりで、右の頬には白く太いゴシック体で001と彫られている少女。
リビングのソファにどっかり座っていた紫髪の少女は何やら驚いた表情になっていたが、やがて表情を引き締めると口を開いた。
「すまない、気配を消していたにも関わらず気付かれたので多少驚いてしまった」
「いや、気にせんでもいいよ。気配察知は得意だし」
「……まぁいい。本題に入ろう。単刀直入に言おう」
「No.000を返せ、か?」
「違う。先程政府から指令が入ってな、姉を保護した人物の元へ行き信用に足る人物なら姉と共に保護対象にしてもらえ、とな」
紫髪の少女の言葉に思考停止。そしてかっきり10秒後。
「はあぁぁぁぁぁぁ!?」
大きな叫び声が裕一宅に木霊する。
「そんなに大きな声をださなくとも……」
紫髪の少女は耳を塞ぎながら顔をしかめる。
「いや、俺は当然の反応だと思うぞ」
裕一は溜め息をつきながら、
「No.000の事を姉って呼んでいるって事は……」
紫髪の少女の右頬に彫られている001を見ながら尋ねる。
「あぁ、紹介が遅れたな。私はArtificial Human No.001 Type[electric]だ」
紫髪の少女は右手を掲げ、青白く光る稲妻を出して言った。
「要するに、お前も生物兵器なんだな?」
「そうだ」
「ってか生物兵器に兄弟姉妹なんてあるのか?」
「私と姉は同じ人間の卵と精子を用いて造られた。塩基の配列を多少弄っているとはいえ同じ人間の子種で造られた姉妹だ」
「ふーん…てか、最大の問題があるんだが聞いてもいいか?」
そういえば、と頭に置いてから尋ねる。
「なんだ?」
「No.000は脱走してるんだろ? そう易々と一般人と生活していいのか?」
問題はそれだ。
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