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片手間でSAMを全滅させ、更には体の変形まで行える。
これほどの戦闘力や戦闘経験を持つ兵器を軍がそう易々と一般人に託す筈がない。
「あぁ、心配しなくても姉は元々社会訓練をさせる対象だった。軍研究員に預ける予定だったが、正直他人と日常生活を営むことが出来るのであれば保護者など誰でもいい。
それに、お前、井上裕一は父親を戦争で無くし、母親も病気でなくしている。
保護者の資格は独り身であること。
その条件に当て嵌まる。
それに私達の生活費などは気にしなくても良いしお主には多額の給金が政府から支払われる」
紫髪の少女はあぐあぐと自分の髪を噛みながら言う。
「まぁ、一応聞いておくけど、拒否権は?」
「無い。
私達は現在政府軍部の最重要機密事項だ。
私達の存在は国際法に抵触するのでな。
基本は一般人に知られた時点で口封じの対象なのだ。
お前も姉に気に入られていなければ今頃物言わぬ死体になっていた所だろうな」
紫髪の少女は暢気に髪をいじくりながら言う。
「まぁ大体そういわれることはわかってたけどな。
それで、お前は俺が信用に足る存在だと認めるのか?」
問題はこれ。
認められなければ今すぐにここで口封じに殺される。
「……姉は普段、自分の凄惨な過去を人に話さない。
しかし、姉はその血みどろの過去を話し、更には泣き付いた。普段私以外には有り得ない行動を、お前を無意識の内に信頼して行った。
姉はお前を信頼している。
姉がお前を信頼するのであれば私はお前を姉と同じ様に信頼する」
認められた。
即ち、今すぐにここで殺されるような事は無くなった。
裕一は安堵の溜め息をつくと、紫髪の少女をもう一度見直す。
紫髪の少女は無表情で頷くと髪を噛む。
「はいはい質問」
裕一はひょいと右手をあげながら言う。
「ほい、裕一」
学校で教師がするように答える。
「お前ら、戸籍は?」
「……っ!」
紫髪の少女はあ、と言う表情をして困惑する。
「まぁ政府が戸籍位ならなんとかしてくれるだろっておい放電するなバチバチいってるぞ」
「そうだな、明日政府の笠原と言う男がくる、そいつに任せれば良いだろう」
「……ん? 笠原? ……?」
「多分お前が想像している人物であってるぞ。内閣総理大臣兼国軍研究部長だ」
「どーしてそんな政府要人が直々に」
「説明とか言っていたぞ」
紫髪の少女は飄々として答える。
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