邂逅 ~非日常へ~

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「ありがと、じゃっ!」 少女はシュタっと右手をあげると、一瞬で、正に一陣の風の様に風呂場に戻って行った。 「名前・・・か」 裕一はどこからともなく姓名判断の本を取り出してパラパラとページをめくる。 「…………」 まずはNo.000から。 適当に50音の最初から探してみることにした。 葵 「……ボツ。」 絵里香 「……ボツ」 小雪 「……ボツ」 名前を考えるというよりもただ目についた名前をピックアップしているだけの裕一であった。これは裕一なりの軽い現実逃避である。 「……考えて名前付けんの面倒臭いな。お父さんお母さん。俺の名前付けるときはご苦労様でした」 我が子の名前を適当に付ける親なんてそうそう居ないだろう。 「……うーん・・なんか直感でつけよう直感で」 裕一はうーんと日頃余り使わない脳細胞を働かせて考える。 「No.000は髪青いから・・青・・・・蒼……蒼奈でいいか」 裕一よ、余りにも安易過ぎではないか? 思わずナレーションすらも突っ込ませる無気力な思考であっさりNo.000の名前を蒼奈に決めてしまった裕一。 正直なところ、かなり安直だ。 まぁNo.000は無邪気だから喜ぶであろう。 「んで……No.001はと。Electricだから……電気……雷……雷架……雷架でいいな」 またもや安易。 無気力にもほどがある。 でもNo.001の事だから無言の肯定を見せてくれるであろう。 というわけで、それはもうとてもとても安易に簡単に素早く、2人の生物兵器少女の名前は決まってしまった。 その後、風呂から上がった2人は裕一が考えた名前を大層気に入ったそうな。(昔話風) 「お前ら……もう寝れ……」 裕一は風呂に入る仕度をしながら2人に言う。 「じゃぁ裕一のベットは私達の物ね!」 No.000こと蒼奈がびしっと人差し指を裕一に向けて宣言する。 なんか、No.001こと雷架も蒼奈の真似をして裕一を指差している。 「はいはい、わかったよ」 裕一は半ば(と見せかけて実は完全に)諦めて風呂場に入って行った。 「雷架」 裕一が風呂場に入って行ったのを確認すると蒼奈は雷架を引っ張って寝室に入る。 「何、姉様?」 雷架は怪訝な顔をして聞く。 「政府は何を企んでる?」 声色を変え、ドスの効いた声で尋ねる。 「……姉様はお見通しか」 「当たり前」 「……ふふっまだまだ知らなくてもいい」 雷架は不敵に笑う。
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