邂逅 ~非日常へ~

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ざばーっとお湯を浴びると、裕一はたっぷりとお湯が張られたバスタブに浸かる。 「ふ~……」 少しぬるく設定したお湯はじんわりと裕一の体を温め、体に溜まった疲れを癒してくれる。 「今日は余りの大変さに目が回ったな……物理的に」 物理的には恐らく裕一を抱えて大跳躍アンド大逃亡をした蒼奈に向けられたものだろう。 ってか実際に目を回していた。 やっぱり物理的に。 「ってか前途多難過ぎだろ」 裕一の言う事も最もだ。 蒼奈との出合い頭に乗用車爆発炎上。 そのあとSAMの奇襲強襲。 ビル間の連続三角飛び大跳躍。 蒼奈の体に出来る無数の銃創。 片腕引きちぎった蒼奈。 しかもそれがぐにぐに変形してプチ少女に。 そしてビルの谷を駆ける蒼奈。 蒼奈の過去の吐露。 雷架の出現(?)。 食事中の蒼奈の躾。 いきなり風呂場から全裸で現れる蒼奈。 疲れない訳がない。 疲れ無い人は恐らく人間ではないはずだ。 「明日からもどうなってしまうことやら……」 裕一はざばっとバスタブから脱出すると鏡の前に立つ。 裕一の体中には痛々しい傷痕が無数にある。 特に背中が酷く、大きくX字に傷痕が残っている。 「はぁ……」 裕一は溜め息をつくとわしゃわしゃと髪を洗い、だっぱーんと言う効果音と共に泡を洗い流し、再びバスタブへ身を沈める。 「…………」 裕一はふぅ、と軽く息をついてから、右腕に鋭く走った裂傷痕を軽くなぞる。 裕一は正直軍や政府に良い感情を抱いては居ない。 寧ろ逆だ。 裕一は政治になんか全く興味は無いし、軍なんか関わりを持ちたくない。 蒼奈や雷架によって関わりを持たなくてはならないが間接的なのでまだ我慢出来る。 ただ昔の軍からの仕打ちを思い出し、その記憶を押さえ込む。 不毛な繰り返しをバスタブの中で十数分繰り返し、心の整理がついたのか立ち上がり、脱衣所へと移る。 ひょいとバスタオルを掴み、体全体を吹いていると、寝室の方から声が聞こえて来たので耳を傾けた。 「そんなことはありえないし、仕組んだとしても私は抜けてみせる」 「そんなに上手く行くと思っておるのか?姉様」 「馬鹿にしないで。あんたも邪魔するようなら妹であろうと・・・・殺してやる」 声に混じる鮮烈な殺気。 裕一は風呂上がりだと言うのに全身に嫌な汗が吹き出たのを感じた。
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