桜道

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「ねぇ、ってば」 黙々と彼は歩いて行く 「ねぇ、無視しないでよ!!」 「いいから早く来いって」 彼はこっちを見向きもしないで言った 「もう!!どこに行くのかくらいおしえてくれてもいいのに!!」 「うるさいぞ」 「は~~い」 何を言っても無駄だった 彼は私の手を引いてどこかへ歩く 行き先をまったく告げずに… どこまで行くんだろう 彼の肩には 薄いピンク色に染まった 桜の花びらが… 上を見上げると 満開の桜が 春風に身をまかせて 揺れていた とても気持ちよさそうに そしてその中を 大好きな彼と歩く どこまでも… どこまでも… 「美早―」 「えっ、何?」 「目、閉じて…」 私はためらいがちに目を閉じた 「…そのまま進んで」 一歩ずつ恐る恐る歩く どこかはわからない… ただ草と花の香りが風と共にやって来て鼻をくすぐる とても心地よかった 「もういいよ、開けて…」 ゆっくり目を開く 眩しい太陽の光が鋭く刺さる それでも頑張って目を開けた 眼下には自分達の街が広がっていた 桜の花びらが舞う街が一望できた とても幻想的で それでいて、なんだか儚い そんな風景だった 彼はただ遠くを見つめていた
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