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「ここ、特別な思い出の場所なんだ」
呟く様に彼は言った
「愁にもそんな場所ってあるんだね」
「ああ」
からかうつもりだったのに、あっさり返されてしまった
…
沈黙が続く
「ど、どんな思い出なの?」
慌てて尋ねた
彼はしばらく黙っていた
ただ、眼下に広がる景色のさらに遠くを見つめていた
「おれが美早に告った時の事…覚えてるか?」
いきなり問われて、ビックリした
「もちろん」
私は少し大きく反応した
「メチャ緊張してたよね、愁」
思わず笑ってしまった
「ああ、マジで緊張した」
そう言う彼は、まだこっちを見てくれなかった。
彼は続けた
「ここなんだ…」
「えっ?」
意味が分からなかった
「ここで―ったんだよ」
上手く聞き取れなかった
「ん?何て言ったの?」
「だ・か・ら」
ふぅ~、と彼は深呼吸をゆっくりした
「ここから、美早に電話かけたの」
ようやく意味を理解した私は、ちょっと彼に意地悪したくなった
「何て言ったんだっけ?」
「…忘れた」
「…もう知らない!!」
私は怒った…フリをして後ろを向いた
―たぶん、覚えてるんだろうな…
そんな考えが頭をよぎった
………
瞬間………
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