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今日は特に大口の客は来店せず、張りのない仕事内容だった。
客も早く引き、俺は裏で待機しようと思っていると、マネージャーにヘルプに行ってくれと頼まれた。
「遊人君、6番テーブルお願いね!」
『6卓?』
目をチラッとテーブルに向けるとそこは……
銀のテーブルで、銀とヘルプ1人、客は4人。
――うぜぇな……
『あのさ、他の奴着けらんないの?』
「他に空いてないから頼んでるの、行ってきて!」
若干きつい言い方をされ、小さく舌打ちをして渋々首を縦に振った。
――なんで俺があいつのヘルプ行かなきゃなんねぇんだよ
『ご一緒させて頂きます、遊人です』
若干低いトーンで挨拶、ここで空気を汚してやろうと一瞬頭をかすめたが、それじゃ俺がただ悪者になって自身の評価を落とし兼ねないのでやめた。
トーンを戻し笑顔で仕事、だけどあまり乗り気がしないのは事実、ヘルプ作業だけを俺が引き受けた。
「この前の大会で銀ちゃん惜しかったよねぇー!」
どうやらサーフィンの会話、大会は他県だった筈。
――御熱心な客だ事
「サーフィン上手でホストとか、マジ最高のステータスだよ!」
「だよねー!確かにぃ!!カッコイイよね!!」
銀はテーブルの真ん中に座り、それを挟む軽そうな女共がワイワイ騒いでる。
「いや、そんな事ないですって、ハハッ!」
そう言いながらも照れ笑いで答える銀に苛々する。
あいつはどんな客にも言葉を崩さず丁寧な物言いをする、それにすら俺はイラッとしてしまう。
銀に一度は抜かれたが先月に抜き返し、それで事は済んだ筈なのに、何故か銀に対しての苛立ちが消えない。
この感情が何のかは俺にもわからないが、銀の全てを否定したがるんだ。
銀はそんな俺を少し見ては目線を下げ、客と会話をしていた。
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