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デート約束の日、出掛ける準備は出来ているが、俺はソファーに腰掛け冴えないテンションで溜め息ばかりを吐いていた。
――どうすっかな……何処へ行くのも構いはしないけど、車が必要だよなぁ‥‥
悩んでる内にも時間は経ち、約束の13時に近づき腕時計をチラッと見て重い腰を上げた。
――しょうがねぇ、これも仕事だ‥‥
そう呟いて車のエンジンを掛ける。
――すでに美佳も乗せちまったし、今更1人増えても変わらねぇ!
―…立入禁止の芝生、一度踏み込めば次からは簡単に踏み込む、今回は美佳の時の様に止むを得ない訳ではない筈なのに、仕方ないと簡単に割り切ってしまう。
―…そんな遊人は客の家の近くにあるコンビニへ車を走らせ、客を拾った。
「ねぇ、何処行こっか!」
『何処行きたい?』
完全に割り切った俺は笑顔で答える。
――バレなきゃいい、簡単な事だ‥‥それに此処は麻理の地元より離れているんだから大丈夫
よこしまな考えで麻理への罪悪感を押さえ込む。
観たい映画があると客が言い、俺はそれに従い車を走らせた。
『チケット俺が買うよ!』
「なら私飲み物を買ってくる!コーラ飲もう!」
そして始まった映画はありふれた恋愛もの。
【どうだ?切ないだろ?】
【どうだ?悲しく美しいだろ?】
そんな泣かせようとした作りの映画に、見事客は号泣しているが、俺は何も感じない。
『………眠っ‥』
「ちょー泣けたぁ!ヤバイよあれ!!」
映画も終わり、半分寝ていた俺と違い、感動して妙にテンションの上がった客との温度差に少し欝陶しさを感じつつ、腹も減ったので近くにあったバイキングの店へ入った。
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