就職以前 Side France

2/4
前へ
/31ページ
次へ
フランスといえばパリ。 様々なブランド店が集まり、ファッションの最先端が次々と生み出されていくことで有名な街。 だがそこは、一流の料理人たちが店を連ねる地としてもまた、広く認識されている土地でもある。 そんな数多くあるレストランの1つ。 普段は話し声や色々な料理の匂いで活気づいているフロアも、店を閉めて2時間もすると、ゆったりとした空気が漂う。 しかし、無人と思われた店の戸を叩く青年がいた。 「こんばんは」 その動きに合わせて、沈んでいた埃が空中に舞い戻り、微かな月明かりを浴びて漂う。青年は静かなフロアを横切り、厨房へと向かった。 厨房とフロアを区切っている戸を押し開けると、沢山の調理器具に出迎えられる。 青年――リラが照明の光に慣れない目を細めながら奥をうかがうと、男が一人、立っていた。 「お久しぶりです。伯父さん。」 細めた目をさらに細めながら、リラが言う。 「あぁ。久しぶりだな、リラ。元気にしてたか?」 男も、手を広げながら近づいた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加