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フランスといえばパリ。
様々なブランド店が集まり、ファッションの最先端が次々と生み出されていくことで有名な街。
だがそこは、一流の料理人たちが店を連ねる地としてもまた、広く認識されている土地でもある。
そんな数多くあるレストランの1つ。
普段は話し声や色々な料理の匂いで活気づいているフロアも、店を閉めて2時間もすると、ゆったりとした空気が漂う。
しかし、無人と思われた店の戸を叩く青年がいた。
「こんばんは」
その動きに合わせて、沈んでいた埃が空中に舞い戻り、微かな月明かりを浴びて漂う。青年は静かなフロアを横切り、厨房へと向かった。
厨房とフロアを区切っている戸を押し開けると、沢山の調理器具に出迎えられる。
青年――リラが照明の光に慣れない目を細めながら奥をうかがうと、男が一人、立っていた。
「お久しぶりです。伯父さん。」
細めた目をさらに細めながら、リラが言う。
「あぁ。久しぶりだな、リラ。元気にしてたか?」
男も、手を広げながら近づいた。
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