祝福の国

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冷たい風が草原を駆け抜ける。 北のローラン山脈から吹いて来る季節外れの冷風に、空を見上げていた女性が、肩を抱きながら、身を震わせる。 「風が冷たくなった。そろそろ近いな・・・」 自分の中で確認するように呟いた彼女の後ろから、名前を呼ぶ声が聞こえる。 「隊長!何をしているんですか?キャンプの用意が出来ましたよ」 そう言われて、腰まで伸ばした長い金髪を靡かせながら、報告しに来た背の低い髪を短くしている少女に返事をする。 「分かった、ヅミー。すぐに行く!」 ヅミーと呼ばれた少女は、抱えていた弓を重そうに担ぎ直しながら、テントの張っている場所へ戻っていった。 「ここは見晴らしが良すぎる。移動するべきか・・・」 先程のヅミーの言葉を忘れたかのように、また彼女は考え始めた。 「だが、急な任務でここまで行軍して来て皆疲れている。今動くのはさすがに酷だな」 そう考えが纏まったところで今度は、少年のような印象のする女性が彼女を呼びに来る。 「オイ!何やってるんだ アルシオン。早く戻って来い!ったく、手を焼かせるなよな」 急に現実に引き戻された アルシオン は、先程と同じような返事をする。 「ああ、すまない。今向かうよ」 そう言って、北にそびえているローラン山脈を一瞥してから、アルシオンはキャンプに引き返して行く。
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