祝福の国

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キャンプに戻ると、先程呼びに来た女性が胡坐をかきながら、香ばしく焼けた干し肉を食べていた。 「瑠可!その姿勢はなんだ!少しは女らしくしろ!」 口一杯に肉を放り込んでいた瑠可は、突然に大声で注意され、喉に肉を詰まらせながら反撃する。 「あのなぁ、私達は国で家庭を守っているような可愛らしい女とは違うんだぜ。それに、ここは一応戦場だろ?礼儀作法なんて関係ないだろ」 悪態をつかれて些か腹が立ったアルシオンは、売り言葉に買い言葉で反論する。 「お前は昔からそうだった。士官学校の時からだ。いつも常識外れな行動ばかりして、我がロラン軍の評判を下げる。演習で同じ班になった時も・・・・・・・・」 小言を言い続けるアルシオンに、瑠可は腰に帯びた通常よりも短い剣を抜きながら、彼女に向かって提案をする。 「じゃあ、いつもの様に剣で決めるか?」 まるでその言葉を待っていたかの様に、木箱に立て掛けてあったハルバードを手にして、瑠可に構える。 「望む所だ」 そう言い放ち二人が切り合う寸前に、今までやり取りを静観していた一人の女性が踊り出て来た。 「ハイハイ。二人共止めなさい。もう訓練生ではないのよ」 急に出て来て仲裁を始めた彼女に、やる気だった二人は交互に文句を言いだす。 「止めるな アマテラス!」 「瑠可の言う通りだ。止めないでくれ」 先程まで危うく殺し合うかのような剣幕だった二人にアマテラスは、子供を宥めるように優しく諭す。 「あら?さっきまでいがみ合っていたのに気が合うじゃない。瑠可はもっと冷静になりなさい。アルシオンは他人の個性をもっと理解した方が良いわね」 まるで母親の様な喋り方に、やる気を無くした二人は、恥ずかしそうに武器を納める。
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