祝福の国

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「ところでアルシオン、これからどうしますか?」 ナイフを磨きながら聞いてきたのは、真っ直ぐに伸びた黒髪が美しい切れ長の目をした少女だった。 「確かに結希の言う通りだな。私も今後の事が知りたい」 先程まであんなに感情的になっていた瑠可も、賛同する。 アマテラスや少し離れた所で食事の後片付けをしているヅミーも興味があるようだ。 「そうだな。余裕があるうちに皆の意見も聞いて、決めておこうか」 「まず、私達が優先させる事は、ハル様から依頼された任務をこなす事だ。もう私達は国境近くに来ている。そろそろ問題になっている北の蛮族に出会っても可笑しくはない場所だ。そこで、戦闘になった時の陣形を決めておきたい」 そこまで話すと、アルシオンは近くに落ちていた小枝を拾い、地面に図を書きながら説明を続ける。 「いいか、良く聞いておけ。敵の詳しい数などは把握出来ていない。しかも皆知っているだろうが、蛮族は一人一人の力が強い。だからこそ陣形が大事なんだ。一人が手柄を焦って全滅する様な勝手な行動はしないでくれ」 前置きが長い事に痺れを切らしたのか、ヅミーが横槍を入れる。 「それでは隊長、どうしますか?」 話しを中断されて、少し顔が曇ったアルシオンだが、皆に悟られない様に話しを続ける。 「まず、先に敵を発見した場合は、アマテラス、ヅミー、結希の三人に弓とナイフで遠距離から攻撃してもらう。それから私と瑠可の二人で敵を迎え撃つ。アマテラス、ヅミーは引き続き弓で応戦してくれ。結希は後列の二人を守りながら、状況を判断して前列に加わってくれ」 説明を終えるとアルシオンは、さらにいつもの言葉を言い出す。 「今回は詩姫が同行していないから厳しい任務になると思う。いいか!誰一人として死ぬ事は許さん!」 説明が終わり、彼女達の顔に笑顔が出てきた時、アルシオンは80歩程先の草むらに、鈍く光る二つの目に気付く。
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