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この辺りに生息している雪狼か と、一瞬考えたアルシオンだが、すぐにその考えを捨てる。
なぜなら雪狼は、群れでは行動せず、繁殖期にならないと二匹以上で行動する事はない。
しかも今の季節は、繁殖期ではないからだ。
「皆、各自の武器を取れ。そして、さっき話した作戦を実行しろ」
恐らく敵であろう者を前にしたアルシオンは、小声で話すと、自らもハルバードを手に取る。
全員が武器を取り終えると、相手も気付いたのだろう、手にした武器の様な物を振り上げながら、彼女達の方へ駆けてくる。
「アマテラス!ヅミー!弓で応戦してくれ!瑠可!私について来い!後列の二人との距離を出来るだけ離すぞ!」
瞬時に命令を下してから、敵との距離を詰めていく二人の後に、結希も遅れて続く。
彼女のナイフでは、あまり遠くからは攻撃する事は出来ない。
かといって、前列で力の強い蛮族に、ナイフで善戦する事も期待出来ない。
しかし、前を走っている二人の援護が出来る事を彼女は知っていた。
「一人、二人、三人、四人・・・」
敵との距離を詰めながら、アルシオンは冷静に敵の数を把握しようとしていた。
冷静に分析しているアルシオンの頭の上を、後列の二人が放った矢が飛んでいく。
その矢で、一番前を走っている敵の一人が倒れ込む。
倒れた敵の横を走り抜けながら、後ろの結希に指示をだす。
「結希、トドメを刺せ。私達は残りの奴を迎え撃つ」
そして、隣を走っている瑠可にも指示をだす。
「瑠可、敵は残り三人だ。私は二人を相手にする。お前は一人を頼む。蛮族の力の強さを侮るなよ。お前の小剣では受け止めるのは辛い筈だ」
指示を受けた瑠可は、その通りだな と、心の中で思いながら返事をする。
「了解」
その言葉の後に、金属がぶつかり合う音が、夕暮れの草原に響き渡る。
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