祝福の国

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力の強い攻撃を受けながら、アルシオンは相手の隙を伺っていた。 多人数を相手にする場合、焦っては駄目だという事を自分に言い聞かせながら。 「クソッ!思ったよりも力が強いな。焦ってはいけないが、これでは消耗するばかりだ」 そう考えると、隣で戦っている瑠可の事が気になり、攻撃の合間をぬって目を向ける。 どうやら瑠可は、敵の攻撃を上手く受け流しながら善戦していた。 勝負がつくのも時間の問題だろう。 「フッ。一番心配かけているのは私の様だな。とにかく、一人をどうにかしなければ」 今まで防戦一方だったアルシオンは、決心すると、一人が振り下ろしてきた斧の一撃をハルバードで受け止める。 相手の攻撃に力負けしたのか、ハルバードが後ろに反らされてしまう。 好機と見たのか、もう一人がアルシオンに向かって斧を頭に埋め込もうと、突進していく。 その瞬間、アルシオンは左手にハルバードを持ち替えて、敵の顔面に強烈な一撃を与える。 思いも寄らない一撃を顔面に受けた蛮族は、糸が切れた人形の様に倒れ込む。 「あーあ、あれを喰らったか、可哀相に」 隣で戦っている瑠可が呟く。 「アルシオンの篭手は特別な金属で出来ているんだよな。鉄より硬くて木材の様に軽いヤツで。名前は何だったっけ」 攻撃をかわしながら、瑠可は これで決まったな と思いながら、今まで防戦していた相手を倒す為に、反撃に転じる。 アルシオンも同じ事を思っていたらしく、疲れが見え始めたもう一人の敵に向きを変えた彼女の瞳に、信じられない物が映り込む。 「まさか!?まだ隠れていたのか」 奥の背の高い草むらから、3体の黒い影が近付いていた。
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