*始まりと“終わり”

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『はぁ…。』 彼の名前は、松本 千種。 歳は14。 一言でいうならば、【臆病者】だ。 そんな彼に、母は呆れ果てていた。 『母さん、出かけてくる。』 『あら、珍しいわね。』 会話は、それだけ。 外に出ると、必ず向かう場所がある。 『ハナ、元気にしてたか?』 動物病院。 “ハナ”は、子犬の名前。 半月前、弱っていたハナを千種が見付けたのだ。 『やぁ、千種くん。1ヶ月ぶりくらいだったかね?』 『山田先生、こんにちは。』 山田 康之。 獣医で、ハナの担当医だ。 『ハナ、相変わらず元気ですね。』 『………千種くんには、そう見えるのか…』 『えっと…』 『ここ1ヶ月でハナは随分と衰弱しているんだ。』 『そ、そんな事…』 ハナは、ただただ千種に頬ずりをしている。 見る限りでは、衰弱しているとは思えなかった。 『…………どこが悪いんですか?』 『ここだよ。』 山田は、自分の心臓を指さす。 『治る見込みは―』 『0だ。』 同時に、ハナは倒れる。 『ハナ…?』 『寿命、だな。最期に千種くんに会えたんだ。ハナも幸せだったと思うよ。』 『……………。』 *
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