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会社に着いて真っ先にすることと言えば、髪が乱れてないかチェック。仕事はその次。
オフィスレディの私はお茶酌みと書類のコピーが主な仕事だ。
まだぴっちぴちの二十四歳だからか、男共は妙な気を遣ってくれる。
ある人はこう言った――そういう下心も三十過ぎたらなくなるわよ――と。
「瀬戸さん。悪いけどコピー頼めるかい?」
瀬戸というのは私の名字。瀬戸春華(セト ハルカ)がフルネーム。
「は、はい」
男性社員から一枚の書類を受け取り、一枚コピーして返した。
「ああ。すまない、助かったよ」
男は私の方を見ることもなくコピーを受け取った。
少々怖そうな顔だが、仕事が出来る男――を絵に書いたような人だ。
でもタイプじゃないからときめいたりはしない。
私を射止められるのはダンディズム溢れるIT関係の社長だけなのだ。
もちろん年収五百万以上ということは言うまでもない。
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