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──土方 side───
何が、起きた?
一瞬コイツの身体が光ったと思ったら…
「ククク……、鬼の副長と呼ばれるアンタがそんなに驚くとはなァ」
声も姿も、何もかもが先程とは全くの別人ではないか。
「黙れ」
「おーおー、恐いねェ」
まるでこの状況を楽しむように、それでいて全く隙を見せない。
(やはり、詐欺師……だな)
「何か言ったか?」
「いや、何も。…というか、オイ。お前いい加減に大人しく捕まりやがれ」
「捕まれって言われて捕まるバカがどこに居る」
まぁ、確かに。
しかし、こいつのこの様子の変わり様は何なんだ。
クソ……!
こいつの言動一つ一つに俺の思考が狂わされる。
「じゃ、コレ貰ってくわ」
言うなり、コイツを拘束していた筈の俺の腕の中を簡単に潜り抜け、盗んだ仮面を自身の顏に着けて立ち上がりやがった。
「は? オイ、ちょっ…」
「またな。鬼の副長さん」
まるで愉快だとでも言うようにクスリと笑い、漆黒の翼を大きく広げ夜空へと飛び立った怪盗。
「クソッ……!」
アイツを捕まえようとした右手は行き場を失ったが、悔しいという感情を握り拳に変えて地面に叩き付けた。
「……こりゃあ長期戦に、なりそうだな…」
アイツが落としていった闇色の羽を掬い上げ、月が見守る中、一人そう呟いた。
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