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「良かったね、特に何か悪いわけじゃなくて」
「あぁ、ありがとうな三条。わざわざ心配してくれて」
「う、ううん! そんなお礼を言われることじゃないよ!」
「あらあら、青春してるわねー2人とも」
「ふ、藤先生! ち、違いますよ!」
保険医の藤にからかわれ、反射的にそう答えてしまう。保健室で身体を診てもらったが、特に問題もないとのことだった。
「じゃあさっさと戻りなさいね。私は本部の方に戻るから。2人きりだからってお楽しみしてるんじゃないわよ?」
「「しません!」」
からかうだけからかって藤は戻っていった。本当にあの先生は苦手だ。
「……じゃあ、俺らも戻ろうぜ。もうエキシビションは始まってるだろうし、早くしないと光にどやされるからな」
「そ、そうだね……」
「……三条?」
今度は亮の顔色があまりよくないように見える。なにか思い詰めた表情。
「あ……あのさ、刃君!」
「お、おう」
かと思えば、今度はしっかりと刃を見据えてハキハキとした物言い。そして、次に亮の口から出た言葉は……。
「……こ、このまま2人で、サボらない?」
「……へ?」
驚きの提案だった。亮は真面目で優しくて、サボるなんてことを考える子だとは思っていなかった。
そりゃ1男子高校生としては、亮のような可愛い子にそんなことを言われたら普通は期待して舞い上がってしまうだろう。
しかし俺は違う、そんな言葉を言われて舞い上がって勘違いして即答してしまうようなバカではない。きっとこれには理由があるんだ。
刃は1つ深呼吸して、にっこり笑って亮に返す。
「喜んで!!!」
「ほ、ほんと!?」
しまった、間違えた! つい本音が!
「じゃ、じゃなくて、なんでそんなこと言うんだ亮! 実行委員の俺らがサボったら問題だろ?」
「で、でもこのあとはエキシビションだけだし、きっとなにも起こらないよ! だから、一緒に……」
「いや、あと少しなら尚更最後までやりきったあとでの方が……」
「で、でもほら! 『2人でサボる』ってなんか青春っぽいじゃない? わ、私、そういうのに憧れててね……」
なにかシドロモドロな亮の態度。ここまでわかりやすいと、鈍い刃でも容易に察する。
「……なぁ三条、なにか隠してるか?」
「…………えっ?」
思えば、さっき亮はなにか言いかけていた。なにかを亮は隠しているような、そんな感じを受ける。
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