プロローグ

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プロローグ

 ある世界、心が武器になる世界。人はその武器を『I'tem(アイテム)』と呼んだ。  いつからあったのかわからない力。その強大な力。  そんな世界で、1人、その力を持てない少年がいた。  これはその少年の勇気と友情と成長、そして恋の、物語である。              *  男なら誰もが一度は憧れる。ヒーロー、救世主、正義の味方、勇者、騎士。誰かを守れる存在。  それはこの町、桜ヶ峰(さくらがみね)町の子供だって例外ではなく、強きを(くじ)き弱きを守る。そんなヒーローに憧れた少年たちがいた。 「ほらお前、あの大門寺の子供なんだろ?」 「だったらバク転とかもできるよな? ほらやってみろよ」 「で、できないよぉ……!」  町の一角。とある公園で女の子が男子3人に囲まれている。 「女だからかぁ? なっさけねぇの! お前の家ってそういうの出来て当たり前なんだろ? 出来るように俺らも手伝ってやるよ!」 「や、やだぁ!」 「やめろ、お前ら!」 「……ゲッ!?」  そのいじめっ子の背後に3つの影。いじめっ子達はその影の正体を知っている。 「くそっ、逃げろぉ!」  戦うという選択肢すらなく、いじめっ子達は散り散りに逃げていった。  彼らは踞って泣く少女に歩み寄り、手を差し伸べる。 「……大丈夫? 光ちゃん」 「……うぅ!」    よほど心細かったのだろう。光と呼ばれた彼女は手を差し伸べた少年に思わず抱きつく。 「怖かった……怖かったよぉ、刃君!」 「うん、もう大丈夫だよ。あいつらはいっちゃったから」  助けたヒーローは彼女の頭を撫でながらあやし、隣に立つ2人の少年は優しい笑みを湛えて2人を見守る。 「大丈夫だよ。僕らが、絶対守るから」  しかし、このヒーローの物語は今の物語じゃない。昔々の物語。子供の頃の物語。  ──もう10年も前の、彼らの物語。
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