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いったいいつからこんなやつになってしまったのかと彼──火野刃は思い見る。
確かに光は昔はこんなではなかった。
彼女はこの桜ヶ峰の由緒ある道場、大門寺家の長女であったが、気は小さく争いごとが苦手な性格であったはずだ。
ところがいつかを境に、彼女はこのように負けん気の強い性格になった。理由こそ定かではないが、それが刃にとって望ましかったかと問われれば難しいところである。
「それはそうと、あんたいつまで私たちを待たせる気よ。翔矢も流斗ももう校門で待ってるのよ」
「ゲッ、マジで!?」
思わず時間を確認すると、下校時刻はもうすぐに迫っていた。どうやらうたた寝をしている間に随分と時間が経ってしまっていたらしい。
「まぁ、アンタが『今日は1人で図書室に籠もって勉強する』って言った辺りからこうなることは予想してたから、見に来て正解だったわね。もし待ってて来なかったら本当に私の投げ技フルコースお見舞いするとこだったわ」
本当にそうなってたらと思うと刃の背筋が凍る。そうなれば間違いなく、明日はない。
「わ、悪い! 今準備する!」
「謝るなら、向こうの2人にしなさい。きっと今頃大変なことになってるだろうし」
ため息交じりにそう言った光の言葉に、思わず刃も顔を曇らせたのだった。
*
「……ほーら言ったことか」
刃と光が校門前までたどり着くと、光の想像通りの事態になっていた。
校門前には随分な人だかり。その全てはこの学校の女生徒で、目当ては輪っかの中心にいる2人だ。
「悪いな、ワイら友達を待ってるだけなんや」
「すまないが、ここに屯しては他の人の迷惑になる。だからまた明日にしてくれないか」
中からそんな声が聞こえて、目的の人物が中にいることを刃と光は確信。
少し校門前で待機した、もっと言えば約束の時間に刃達が遅れただけですごいことになっている。
「……はーい、ごめんなさいね。その待ち合わせの相手、私たちだから。ちょっと通してくれる?」
そんな中、光はその人並みに突入。刃もその後に続く。
「おぉ刃、光! やっと来おったか!」
人混みの中に入ってすぐに見えたのは、人混みの中でも一際目立っている金髪で上背のある青年と、綺麗な蒼の瞳を持つ青年。
2人もこちらに気づいたらしく、刃と光に手を振ってくる。
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