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戸惑いながらも立ち上がり、制服の汚れを払う。
泥などの汚れはあるものの、身体には傷ひとつない。
どういうことだ。
「わたし、死んだんじゃ…?
は、意味分からない。トラックに引かれたよね。
何でこんな田圃道の真ん中で寝てる??」
独り言だ。虚しくなった。
こんなところで一人なんて嫌だ。
何が何だか分からずに、こんな場所で一人きり?
断固拒否だよね。
そんな中、あるひとつの推測が浮かんだ。
「もしかして、拉致られちゃった感じ?」
TVだけの話しだって思ってた。じゃあ、ここは某独裁国家?
絶対嫌。嫌嫌、絶対に嫌!
背筋に寒気が走る。今起きていることがリアルに思えて怖くなる。
寒気に背筋を凍らせながら暫く立ち尽くしていて気付く。
このままぼーっと突っ立ってても意味ないという事に。
怖かったけど、歩き出すことにした。そうするしか道は無さそうだったからだ。歩きだして分かったのは、拉致られたわけでは無いということである。
歩を進める内に数人の人と出くわしたが、皆日本の着物だったからである。
顔も日本人らしい顔立ちだった。
ならば此処は何県?何処村?
それに何でこの人達、着物なんだ??
祭りでもあるのか。
見知らぬ人に「祭りでもあるのですか?」なんて聞く勇気、わたしには無い。
あと気になったのは人々のこちらを見る目である。
怪しい不審者を見る目だった。
ちょっと心外だ。
ふと携帯を持参していたことに今更気付いたあたしはスクールバックから携帯を取り出す。驚きから、携帯の存在を忘れていた。
スライド式の携帯を上へと持ち上げる。
「っっ!!?」
圏外になっていた。壊れた様子もない。至って大丈夫そう。
電波の通っていないところでは携帯など唯の小さな金属でしかない。よく無人島に行くなら何を持っていく?というプロフィールの質問があるが、そこに『携帯』などと書く馬鹿が沢山いる。が、そんなもの持っていったって意味がないという事をこれは分かりやすく物語っていた。
圏外という無機質な文字に怒りが湧き上がる。ふつふつと高温で熱された顔を赤く染める。
希望は散った。訪れたのは落胆だけ。溜息が毀れた。
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