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道中わたし達は各々の恋話に花を咲かせていた。頬を赤く染めて照れながら語るこの子がわたしは好きだ。
話を聞いていると、とても幸せそうに笑う彼女達カップルを応援したくなる。
「でね、それでゆうくんが、わたしにキスしてくれたわけ!
超幸せじゃない?」
ゆうくんというのは、かおりの2歳年上の彼氏で、かなりのイケメンである。1ヶ月程前位から付き合っているらしく、今は彼にゾッコンのかおり。わたしも数回会った事があるが、好感が持てる人だった。
優しくて気がきく。かおりが何をしてもらいたいかなど良く分かっていたようだ。一言でいえば好青年って感じ。
幸せそうに彼氏の事を語る親友が嫌いじゃない。彼女の惚気話を聞いていて、微笑ましくも、羨ましくも思えた。
ニコニコしながら彼女を見つめていると、途端にかおりはわたしの顔をまじまじと見た。
「ねえ、志乃は好きな人とか、いないの??」
「……うーん、居ないー。」
前付き合っていた彼氏に浮気されて以来、彼氏をほしいとは思ってもつくることはないという、矛盾した考えになってしまった。
元彼、俊はわたしが見た目が派手だという表面上の点だけで軽い女だと思っていたらしい。
が、3ヶ月付き合っても手を出させてくれないわたしが嫌になったとか何とか。
わたしはそんなに軽くないんだよ。
そう啖呵を切ってやりたかった。だが、当時大好きだった彼氏に裏切られたわたしにはその気力も無く唯泣いた。
泣き疲れるまで泣いた。涙が枯れ果てた頃にはもう彼の事をどうとも思わなくなって清々した。
「お前が今まで出会ってきた様な尻軽女共と一緒にするな!」今なら真正面から言えそうだ。
「志乃は背も高くてモデル並みに綺麗だし、性格もめっちゃ良いのは親友のわたしが保証する!
あんな糞みたいな男じゃない、本当に志乃の事を大切にしてくれる人がいるはずだから。」
自慢気に自信満々にわたしのことを褒めるかおりに心の中でお礼をつぶやく。
「いいの、いいの。あたしは。かおりが居ればぁ。」
「…ちょっと~、レズ発言はやめてぇ。」
そんな冗談交じりのやりとりが心に染み入る切ない夕日が私達の背中を捉えていた。
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