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文久3年、桜咲く京。
桜が見事に咲き誇り、頭上をひらひらと軽やかに舞う。
ある甘味処では今日も賑わい、沢山の人が詰め掛けた。
「お団子10本、草餠5個下さーい。あ、あと桜に因んで桜餅も5つ!」
軒先で沢山の菓子を注文する男がいた。とても艶やかな顔をした男で一見女にも見える。
食欲旺盛な美しい男の肩に桜の欠片が乗っかる。
「きれいですねぇ~……、今度皆さんを誘って来ましょうか。」
大きな独り言だった。ちょっと恥ずかしげに男は俯くと看板娘の、まさがとてとてと寄ってきた。
「冲田はん、ゆっくりしてってなぁ。」
話し掛けられた男はにっこりと笑ってお礼を言った。
「ありがとうございます。おまさちゃんも頑張ってくださいね。」
まさは顔を真っ赤にさせて店の奥へと戻って行く。
春の息吹に舞う花弁を見つめ小さな声でつぶやく。
「きれいだなぁ…………。」
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