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覚醒していく意識のなかでふと思った。
(目を開けたら、あの世だったりして。
それ、超最悪じゃん。神恨む。)
わたし、死んじゃった?
何処からか心地の良い小鳥の囀りが聴こえる。田舎のおばあちゃん家に遊びに行ったとき以来の自然の音。生まれてからずっと都心に住んでいるわたしは騒音や人々の賑わう声以外ほとんど聞いた事がない。
対して田舎の家は本当に自然がいっぱいでとても美しい所だった。
と言っても、おばあちゃん家にも、両親が事故で亡くなってからは一度も行っていない。
親も事故で死んで、子供もトラックにぶつかって死んで、我ながら上手い冗談だよね。
馬鹿みたいに滑稽な人生だ。
指先、口、鼻のさっきまで麻痺していた感覚が戻ってきた。ゆっくりと目を開ける。
「……ん…。」
ぼやけていた網膜。それも一時だけのことで、少しずつ定まって来た。
さて、あの世とはどんな所かな、と、この状況を他人事のように笑うわたしの目の前に広がる景色に目を見張ってしまう。
そこにあったのは、
広々とした田んぼだけ。
何処を見ても、
田んぼ田んぼ田んぼ。一面田んぼ。
所々ぽつぽつと小さな家みたいなものもあるけど、わたしの知っている家の形にはほど遠い。
「ここが、天国…………?」
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